業界アナリストは、世界中で10億台以上のスマートフォンが使用されており、2013年には、タブレットがデスクトップコンピューターの販売台数を上回ると予測しています。 1 モバイルデバイスの保有率が高まるにつれて、学生と教師が自分の所有するデバイス教室にを持ち込むことを希望しています。テクノロジーのコンシューマライゼーションに向かうこのトレンドは世界中の学校に影響を及ぼし、教育と学習を改善向上させるために「Bring Your Own Device(BYOD: 個人所有デバイスの持ち込み)」がテクノロジーを活用する方法として検討されるようになっています。
教育機関でのモバイルデバイスの使用は、教育において真の意味で既存の価値を打ち砕く転換を引き起こす可能性があります。教師が動画などの複数の形式で情報を伝える能力を持つようになったり、学生一人ひとりの学習スタイルに合わせて創造性に富む学習方法を考案するようになります。BYOD、学生一人ひとりのための自分専用のコンピューティング環境(各学生に同じ型のノートパソコンまたはタブレットを支給)、モバイル学習を実現するためのハイブリッドアプローチのうち、学校がどの選択肢を選ぼうと、対処しなければならないポリシー、セキュリティ、安全、研修、ITインフラストラクチャに関する問題があります。インターネット対応デバイスの台数が増加すると、ワイヤレスネットワークだけではなく、ITインフラストラクチャ全体にわたってパフォーマンスに影響を及ぼします。
最近のフォレスター報告書のなかで、学校のリソースへの場所を問わないアクセスを教師と学生に提供することが、今日の教育におけるIT意思決定者の最優先事項であることが立証されています。2 このホワイトペーパーは、ITと教育のプロがBYODトレンド、学校や大学でモバイル学習をサポートするメリットと課題について理解することを助けるとともに、ワイヤレスネットワークの導入を確実に成功させるためのベストプラクティスを提供します。
IDCは、2013年の全世界のスマートフォンの販売台数が9億5900万台になると予測してます。市場の年間成長率が33%を維持し続けているなか、携帯電話の平均販売価格が急激に下落し、2012年に8%の下落、今年はさらに9%下落すると予測されています。3 全世界のタブレット出荷台数は、2013年には2億4000万台を超えると予測されており、ノートブックPCの販売台数を初めて越すことになります。4 同時に、より手頃な価格のAndroidベースのデバイスの登場が昨年の販売台数を上回る66%の成長率予測を牽引しているため、タブレットの小売価格が大幅に下落しました。
この急速な広範なベースのモバイルデバイスの導入は、教師、職員、学生が個人所有デバイスを学校に持ち込むテクノロジーのコンシューマライゼーションにいたりました。世界中のK-12(幼稚園から高校まで)から大学までの、BYOD一括導入の事例は、新しい教育方法と学習方法を示唆していますが、このトレンドは教育業界にとって一時の流行りなのでしょうか、それとも将来的なものなのでしょうか?
教育におけるITリーダー達を対象にした最近の調査によると、BYODに関わる職員の割合が、2010年の20%から2014年には60%に増加します。5 学生に関しては、K-12の分布範囲でモバイルデバイスの使用が広がります。米国マサチューセッツ州のK-12の学生に関して実施された調査で、3年生の20%、5年生の40%、中学生の80%以上が携帯電話を所有していることが判明しました。6 携帯電話を所有する米国の10代の子供のほぼ80%のうち、37%がスマートフォン(2011年の23%から増加)を所有し、4人に1人が自分のタブレット端末を現在所有しています。7 米国の10代の子供の約75%が携帯電話、タブレットやその他のモバイルデバイスからインターネットにアクセスしています。8 大学生のレベルでは、学生の62%が自分のスマートフォンを所有し、2011年の学生数のほぼ倍の学生数が、勉強の目的でこうした端末を利用していると述べました。9
学校でBYODをサポートすることに対する関心は、学生、保護者、教師によるサポートの増加に牽引されて増加傾向にあります。Project Tomorrowが実施した米国の全国調査によると、中学生と高校生の60%以上が、学校支給のノートパソコンやノートブックよりも自分が所有するデバイスを使用することを希望しているのと同時に、K-12の学生の保護者の62%が、学校が教育の目的で使用することを認める場合、モバイルデバイスを購入を希望すると認めました。10
このデータは、手頃な価格で使いやすく、すぐに使えるテクノロジーが、教育現場でのBYODの導入に拍車をかけているという、ITのプロがすでに承知していることを立証しています。モバイル学習は一時の流行りではなく、将来的なものです。
最も成功を収めているモバイル学習環境では、教師、学校経営陣、ITスタッフ、学生、保護者の主要なステークホルダー間で密接な連携と共通のビジョンが持たれています。Project Tomorrow調査で調査対象となった学校経営陣と教師の大半が、学校でモバイルデバイスを使用すると、学生の学習意欲が高まり、学生が仕事の世界に向けて準備する助けとなり、コミュニケーションが改善され、学生一人ひとりに合わせて個別指導を行うことができると認めています。11
モバイル学習環境の教育者は、一人ひとりの進み具合をリアルタイムベースで監視および追跡し、様々な学習スタイルに合わせて創造性に富む学習方法を考案することができます。視覚障害や識字障害など、特殊ニーズを抱える学生に関しては、文字を話し言葉に変換するアプリケーションや、見やすいように低コントラストでテキストを表示するデバイスを使用してサポートすることが可能です。
多くの学校にとって、その学校がある国の言語を読み書きできない外国人学生がカリキュラムについてこれるよう支援することが課題となります。ノートパソコンやタブレットは、ネイティブではない学生が授業で取り上げられたキーワードに関する情報を検索することを可能にするため、こうした言語の壁を打破する助けとなります。これらは、教室でモバイルデバイスを使用することによって、学生主導型学習の新しい教育モデルがどのように実現されているかを示すほんの数例です。
ITリーダーの最近の世論調査では、ITリーダーが学生の学習意欲を高め、教育と学習の環境を拡大し、教師と学生の幸福度と生産性を促進できる機会におおいに張り切っていることが明らかになりました。12 最近の事例によると、学校でノートパソコンやタブレットを使用することを認められている学生は学習に対する意欲と熱意がより高く、保護者は学校の勉強によりよく関わることができます。13
モバイル学習に対する熱意が広がっていますが、教科書や黒板からテクノロジーベースのツールへの移行は多くの懸念を生じています。学校の経営陣の調査では、ベストプラクティス、ポリシーに関する問題、カリキュラム、ネットワークセキュリティや接続性などのITインフラストラクチャへの影響を中心に、導入の壁について数多く言及されました(図2を参照)。14
教育機関にとって限られた予算は常に懸念事項であり、デジタル学習環境への移行にはITインフラストラクチャをサポート・更新・アップグレードするための何らかの投資が伴います。ただし、モバイルデバイスベースの学習への移行によって生じる金銭的余裕を移行に関連する経費を相殺する足がかりとして活用できます。そうした例を以下にいくつか挙げています。
教育におけるテクノロジーに関するフォレスター報告書のなかで、効果的な個別学習体験において、双方向性と深い関与に焦点を置いた教育が創造性に富む学習の起爆剤となり、学生主導型学習の重要性を高めるという概念が明らかにされています。15 BYODとモバイル学習の波に乗ることには問題を伴いますが、教育・学習、学生の学習意欲、運用効率、学校職員の生産性の改善向上の効果は大きいです。
2013年のIT課題の上位10項目の第2位として「ITコンシューマライゼーションとBYODに向かうトレンドのサポート」を挙げた、教育におけるITリーダーの調査が証明するように、モバイル学習を実現することは最優先事項です。16 ITリーダーの最大懸念事項は、帯域幅、ネットワーク接続性、セキュリティに対するBYODの影響に対処する方法です。17
モバイル学習の導入を決定した時点で、デバイスのプロビジョニングに対するアプローチが複数存在することになります。BYODの場合、ハードウェアやメンテナンスにかかる費用が学校側に直接発生することはなく、学生は必要かつ希望するツールを使って学習することができます。ただし、すべての学生が自分のデバイスを購入する余裕があるわけではないため、複数のデバイスやオペレーティングシステムをサポートすることによって、適合性、サポート、統合の面での課題がITに突きつけられる可能性があります。
あるいは、学校は学生一人ひとりに標準仕様限定デバイス(SIOD)を支給することを選択することもできます。SIODベースのプログラムに関連する資金や運用経費がかかりますが、すべての学生がモバイルデバイスに分け隔てなくアクセスできるようになり、教師/職員の研修が合理化され、ITのサポートとメンテナンスが簡略化されます。この場合、安価なノートパソコンはネットワークパフォーマンスを弱体化させかねないため、ノートパソコンの選択が非常に重要です。最安値のノートパソコンは旧世代のワイヤレステクノロジーを搭載している傾向にあるため、ユーザーのワイヤレス体験の品質を低下させ、アクセスポイント数をより多く設置することを余儀なくされます。
多くの学校や学区は、BYODをサポートするのと同時に、一般利用向けの標準ノートパソコンを提供するハイブリッドアプローチを選択しています。この複合的アプローチによって、学校は、必要に応じてデジタル学習戦略を試したり、評価したり、再調整したり、改良したりすることができます。
デバイス管理については、ユーザーアクセスやトラフィックを管理するプラットフォームが数多く提供されています。ワイヤレス管理コントローラーの場合、以下のような選択肢が多数存在します。
学校でのインターネット対応デバイスの台数が急増すると、ワイヤレスインフラストラクチャだけではなく、ITネットワーク全体(図3を参照)にわたってパフォーマンスに影響を及ぼします。ファイヤーウォールやアプリケーションのセキュリティを再評価して、安全かつセキュアなインターネットアクセスを確保する必要があります。Facebookなどの人気のソーシャルネットワーキングサイトを例として説明すると、学校は年齢に応じてアクセス制限をかけたり、すべての学生にユーザーアクセスを許可するものの、ネットワーク帯域幅を大量に消費するFacebook内のオンラインゲームアプリケーションへのアクセス制限を設けることができます。
モバイルデバイスに音声、動画、データが集約されると、ネットワークパフォーマンスの品質を低下させる可能性があります。ネットワークの境界線からのトラフィックが増えると、1ギガビットから、10ギガビットスイッチから40ギガビットスイッチまでの切り替えにバックボーンをアップグレードすることを余儀なくされる場合があります。
モバイルデバイスと接続されたコンピューターの両方から発生する追加の音声トラフィックによって、より高速でより低遅延のリンクに対する要求がさらに高まり、ネットワーク全域の追加トラフィックに対応するためにスイッチのアップグレードを余儀なくされます。また、教室でYouTubeのストリーミング動画を使用したり、大学レベルでオンサイト学習および遠隔学習に対応したMOOC(大規模公開オンライン講座)の普及が拡大することにより、帯域幅の要件が急速に高まり、ネットワークの境界線レベルにおいてファストイーサネットからギガビットネットワークに拡充するための要件に対する勢いが増すことになります。
IDCによると、デジタルコンテンツは18ヶ月ごとに容量が倍増していくと予測されています。18 教育機関のストレージニーズは、モバイルデバイスにより可能になったかつてないレベルのデータ作成と消費によって、急激に高まります。デジタルベースの学習環境では、学生と教師は、紙の資料を減らして宿題、授業プラン、テストなどの核となるコンテンツにモバイルデバイスからアクセスするようになります。幼稚園から高校3年生まで、あるいは大学1年生から4年生にまで学生が進級するにつれて、それぞれの累積的な学習の積み重ねに基づいて一人ひとりのプロフィールが作成されます。
スマートフォンやタブレットなどの所有の拡大は、今日の学校環境におけるテクノロジーのコンシューマライゼーションにいたりました。学生、教師、職員は自分のデバイスを持ち込んで使用し、教育、学習、生産性を改善向上させたいと望んでいます。
BYODのメリットは多々ありますが、ITスタッフと教えるプロは、テクノロジーベースの学習に対して安全かつセキュアなサポートを保証する方法を算段するという課題を突きつけられています。学習が教師主導型から学生主導型へと移行し、学生、保護者、教師の間でより密接な連携が育まれるなか、BYODや学生一人ひとりのための自分専用のコンピューティング環境などの取り組みは、教育学術界の革新的な変化を牽引しています。
学校が、BYODに加えて、またはBYODの代わりとして、学生一人ひとりに標準デバイスを支給するか否かの決断には、研修、ITサポート/メンテナンス、学校の財政面に関する様々なメリット・デメリットや多岐にわたる予期せぬ問題や影響が伴います。
どのような運用モデルを選択しようと、ワイヤレスネットワークはITネットワークを拘束するものでも表面的なお飾りでもなく、モバイル学習を実現する重要な立役者であることを理解することが非常に重要です。教育を変える可能性は、ITのプロがワイヤレスの運用に関するベストプラクティスを実践し、教育・学習のプロセスの極めて重要な一部として、インターネット対応デバイスを使用することによって生じる、ネットワーク全体へのより広範な影響を考慮する場合に限り、実現することができます。
ネットギアは、K-12から専門大学・短大や複数の拠点・キャンパスを構える総合大学までのすべての教育機関にわたって、数名のモバイルデバイスユーザーの規模から、何千人ものモバイルデバイスユーザーの規模まで拡張可能な、手頃な価格で使いやすく、信頼性の高いソリューションを提供するグローバルなネットワーキング企業です。モバイル学習環境をサポートする当社のソリューションには以下が含まれます。
調査、プロジェクト定義、導入、拡張のうちのどのモバイル学習の段階であろうと、ネットギアは、当社の広範かつ経験豊かな再販業者ネットワークを介して、堅牢でセキュアかつ柔軟性に優れたワイヤレスネットワークを設計する助けとなるガイダンスやアドバイスを提供することができます。詳しくは、www.netgear.jpをご覧ください。
2001年に設立されたPalmer Researchは、IT意思決定者やハイテク企業が市場力学をよりよく理解して業務目的を満たすために必要な情報と知識を提供します。会社は米国カリフォルニア州ロスアルトスに拠点を構えています。このホワイトペーパーの著者であるデボラ・チンは、2006年に上級副社長としてPalmer Researchに入社しました。彼女は大手消費財やハイテク企業において、管理職レベルのマーケティングとリサーチ担当として15年以上の経験があります。彼女は米国のコロンビア大学ビジネススクールでMBAを、同じく米国のペンシルバニア大学ウォートン・スクールで経済学の理学士を取得しています。詳細はwww.palmerresearchgroup.comをご覧ください。
脚注:
1 Gartner 2012 and Reader Forecast, 2010 – 2014, Forrester Research, Inc.
2 2011 Global Budget and Priorities Tracker, Forrester Research, Inc.
3 IDC, June 2013
4 NPD Display Search Quarterly Mobile PC Shipment and Forecast Report, January 2013
5 Consumerization of Information Technology/BYOD, EDUCAUSE 2013
6 Research Findings:MARC 2011 Survey Grades 3-12, Elizabeth K. Englander, 2011
7 Teens and Technology 2013, Pew Research Center, March 13, 2013
8 Ibid
9 ECAR Study of Undergraduate Students and Information Technology 2012
10 Project Tomorrow:Speak Up National Research Project, Fall 2009
11 Ibid
12 Top Ten IT Issues 2012, EDUCAUSE , May/June 2012
13 Tablets for Schools Programme, UK Report
14 Project Tomorrow:Speak Up National Research Project, Fall 2009
15 “Schools Move Beyond the Basics:Competition Will Drive Technology Into the Education Market,” Forrester 2011
16 Top Ten IT Issues 2012, EDUCAUSE , May/June 2012
17 Ibid
18 John Gantz, Chief Research Officer for IDC, 2009
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