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エクゼクティブサマリー

スマートフォンやタブレットの使用が引き続き人気を獲得しているため、Bring your own device(BYOD)の傾向が勢いを増し続けています。いくつかのノートパソコンをサポートするために設計されたワイヤレスネットワークは、今や日常的にスマートフォン、タブレットコンピューター、電子書籍リーダーなどのさまざまなモバイルデバイスをホストする必要があります。これらのデバイスは、多くの場合ビデオなどデータ量の多いアプリケーションを実行します。その結果IT管理者は、ネットワークデバイスやアプリケーションでの指数関数的成長に対応できるワイヤレスネットワークを設計及び展開する方法に関して、ますます課題に直面しています。

このホワイトペーパーは、IT管理者がアクセスポイント(AP)のスループットに関する基本的な指針、帯域幅の要件、学校や小規模/中規模企業といった高密度環境におけるワイヤレス展開のためのベストプラクティスを理解することにおいて支援することを意図しています。

はじめに

ワイヤレス展開モデルには、カバレッジとキャパシティベースの2つの基本タイプがあります。カバレッジベースのワイヤレス設計では、その目標は可能な限り広いエリアで、単一または複数のアクセスポイントにより、優れたQoS(RF信号強度に関して)を提供することです。カバレッジベースの展開例には、以下のようなユーザー当たりのWi-Fiデバイス数が少ない比較的大きなエリアを持つ場所が含まれています。

  • ・ 小学校の教室
  • ・ 倉庫
  • ・ 老人ホーム、病院、診療所
  • ・ ホテル
  • ・ オフィスの個人スペース

これらの展開のほとんどで、エリアをカバーするために必要なアクセスポイントの数は、出力電力とアンテナ利得の組み合わせであるAP信号強度によって決定されます。カバレッジベースのネットワークを設計する際に考慮すべき他の要因は次の通りです。

  • 場所のタイプ - オフィス、個人用個室、倉庫、シングルルームのモーテル/ホテルなど。
  • 間取り図と天井の高さ - 例えば、オフィス(10 フィート/3メートル)、倉庫(20 フィート/3m)、ジム(30 フィート/9m)
  • 建設資材と障害物 - 例えば、コンクリート、レンガ、乾式壁、エレベーターシャフト
  • フロアの数
  • 除外エリア - カバレッジが必要とされていない/望まれない場所

ワイヤレス展開の第二のタイプは、キャパシティベースと呼ばれます。このタイプの展開における目標は、限られたエリア内にユーザーが同時に集中している場合も良質のワイヤレスサービスを提供することです。キャパシティベースの展開としては、中学校や高校の教室、講義室、講堂、図書館、競技場、オフィスの会議室などの場所が含まれます。キャパシティベースのネットワークを設計する際に考慮すべき要因は次の通りです。

  • ・ 単一APによってカバーされる特定エリア内のユーザー数
  • ・ 一人当たりのWi-Fi機器の数
  • ・ アクティブであると思われるユーザーの割合
  • ・ 必要とされるアプリケーションとスループットの種類
  • ・ アプリケーションのミックス
  • ・ ネットワーク内のクライアントのタイプ(2.4GHzまたは5GHz)
  • ・ .レガシーまたは11nクライアントプロトコル

企業や学校内では、カバレッジとキャパシティベースの両方のワイヤレス展開を必要とするエリアが混在している可能性があります。大人数のユーザーがWi-Fiにアクセスし、同時にスループットを要求している場合、高密度エリアであると考えられます。大まかには、25~30人のアクティブユーザーが単一AP(約500~1,000平方フィート)のカバレッジエリア内にいる場合、その後、ガイドに記載されている高密度のベストプラクティスを使用してワイヤレスネットワークを設計する必要があります。

アクセスポイントスループットの決定

APが実際にサポートできるスループット量を推定するために理論上の最大値を使用するのは一般的なサイジング間違いです。例えば、無線装置あたり最大300Mbpsをサポートできる、2×2のデュアルバンド無線を使ったアクセスポイントの理論上のスループットは、600Mbps(300Mbps x 2)です。エリア内に25人のWi-Fi同時使用ユーザーが存在すると仮定すると、各アクセスポイントは、ユーザーあたり最大24Mbps(600Mbps/25ユーザー)をサポートできると誤って計算する可能性があります。実際には、理論的限界に対してAPスループットを著しく低下させる要因はいくつかあります。

  • プロトコルとパケットのオーバーヘッド - スループットを40~50%減らす可能性があります
  • 遅いまたは「遠い」クライアント - 遠く離れた場所または信号強度の弱いエリアにいるクライアントは伝送物理レート(PHY)レートを落としてパケットを送信しなければならず(例えば、1Mbpsでパケットを送信するクライアントは、同じパケットをPHYレート100Mbpsで送信するクライアントと比べて100倍かかります)、スループットをさらに50%低下させる原因となる可能性があります。
  • クライアントの偏在 - デュアルバンドの同時APでは、両バンドが同時にクライアントトラフィックをサポートすることができます。しかし、すべてのクライアントがデュアルバンドであり、さらにはデュアルバンドクライアントが均等に2.4と5GHzへ自らを分配するという保証はありません。ネットワークの有効性は、クライアントの動作によりさらに50%減少する場合があります。
  • 制御トラフィック - 低PHYレートでAPとさまざまなクライアントとの間で交換される制御トラフィックは、利用可能な帯域幅をさらに25%減らす可能性があります。
  • その他 - 同一チャネルと隣接チャネル干渉、ネットワーク再送、悪い行動をするクライアントが、APスループットをさらに低下させます。

図1からわかるように、学校や小規模/中規模企業内のエンドユーザーは、APスループットを制約するさまざまな要因を考慮すると、ミッションクリティカルなアプリケーションを実行するために2~3 Mbps/ユーザーしか残っていません。これらの数値は、過去のソリューションと実績による経験に基づいた一例であり、状況に基づいて異なる場合があることにご注意ください。

図1:現実的なユーザースループット

帯域幅要件の確立

高密度のワイヤレスネットワークを設計する際、どのアプリケーションが使用され、各アプリケーションがユーザー当たりのスループットの面でどのくらいの帯域幅を消費するかを理解することが重要です。以下の図2のグラフは、インターネット、オーディオ、ビデオ、印刷、ファイル共有、オンライン試験といった一般用途のためにどのくらいのスループットが必要かについて、いくつかの一般的な参照を提供しています。より多くの学校が日常の教育ツールとしてこのようなknowmia.comyoutube.comなどのオンラインビデオ・アプリケーションを使用しています。グラフからわかるように、スループット要件は、ビデオの解像度に応じて、ユーザー当たり2から4Mpbsに変更することができます。アプリケーションごとの帯域幅がわかれば、この数字はユーザーごとに必要な帯域幅を計算するために使用できます。

図2:アプリケーションの種類別 平均帯域幅の要件

使用するアプリケーションの種類に加えて、帯域幅の要件は、ワイヤレスネットワーク上の予想されるユーザー数に基づいて変化します。より多くのユーザーがネットワークにアクセスするにつれ、ユーザー当たりのスループットは低下し、伝送速度の低下を引き起こします。ネットワークが混合クライアント(11a、b、11nモード)で構成されている場合、クライアントあたりの平均スループットもレガシークライアントの数が大きくなるにつれ低下します

アプリケーションの種類が識別され、アプリケーションの種類ごとの帯域幅が決定されると、合計Mbpsをカバレッジエリア内の予想ユーザー数により乗じることで、必要な総帯域幅を確立することができます。

おすすめの高密度設計トップ10

次の設計上の推奨事項は、成功した多くのインストールに基づいたベストプラクティスであり、高密度環境においてワイヤレスネットワークを適切に設計、計画、展開するための指針となるべきです。

  1. 1) 高密度エリアの特定 - AirMagnetプランナーのようなライブRFツールを使用して設計プロセスを開始し、高密度エリアを識別します。
  2. 2) デュアルバンドAPの使用 - デュアルバンド同時アクセスポイント(2.4GHzと5GHzの無線装置)を使用して、ユーザーが利用できるスループットを最大化します。両方の無線装置を常時有効にします。
  3. 3) APオーバーラップの設計 - 高密度エリアでAP配置を設計し、各クライアントが常に2から3つのアクセスポイントが見えるようにします。1つまたは2つのアクセスポイントが任意の時点で過負荷になった場合、クライアントは、エンドユーザーに負の影響を与えることなく、別のアクセスポイントへ負荷分散することができます。
    図3:高密度エリアのAPオーバーラップ設計
  4. 4) 負荷分散トラフィック - APのしきい値を設定して効果的に大気資源を利用し、クライアントで見ることができるすべてのアクセスポイントへトラフィックの負荷を分散してください。Netgearの社内試験に基づいて、当社は、高スループットアプリケーションの最大クライアント数を25~30へ、最小RSSIしきい値を(-73dBm)に設定することをお勧めします。これは特定のAPが受信良好時に最大25~30のクライアントにサービスを提供することを意味します。
  5. 5) 教室ごとに1つのAP - 教室あたりの生徒数が25~30人、1:1プログラムやHDビデオストリーミングなど、日々教室で行われる授業においてトラフィックが高スループットな中学校や高校では、教室ごとに1つのAP及び廊下に追加のAPを使用します。
  6. 6) APパワーを低く設定 - APのパワーを上げると、さらに同一チャネルと隣接チャネル干渉を引き起こす可能性があります。お勧めの方法は、出力電力を2.4GHzのAPには半分または4分の1、5GHzのAPには半分に設定する一方で、第三のAPを追加することです。
    図4:AP出力を最大電力にチューニング
  7. 7) 有線ネットワークのアップグレード - 高スループットのAPをサポートするのに十分な帯域幅が有線ネットワーク上にあることを、PoEジグスイッチを端に、1Gまたは10Gスイッチをアグリゲーション/コア層に配置することにより確認します。
  8. 8) 現場へ向かう - 物理的現地調査を実施し、Wi-Fiまたは非Wi-Fiソースからの潜在的な干渉形式を特定及び解決します。
  9. 9) 負荷試験 - ライブ配置前に、ネットワークに全負荷をかけ、BYODの実施によって生成されたトラフィック量に対するネットワークの処理能力を検証します。
  10. 10)知識の共有 - 高密度ワイヤレス設計は、K-12教育や中小企業のIT管理者の間ではまだ比較的新しいトピックです。他の展開成功例からベストプラクティスの知識を共有することは、貴重な資源となる可能性があります。

まとめ

BYODが当たり前になるにつれ、ビジネス環境だけではなく、学校、病院、さらには政府の建物のような施設でも、ワイヤレスネットワークは、生成されたトラフィック量における大幅な増加に対応するために設計されなければなりません。高密度の環境においては、スループットに対する要求は多くの場合、ネットワークリソースを同時に消費する複数のアプリケーションを使用している2、3台のデバイスを持ち運ぶユーザーによって増幅します。ワイヤレス展開の成功の鍵は、まずご使用の環境がカバレッジやキャパシティベースであるかどうかを理解することです。展開シナリオに基づいてパラメータを評価すると、本文書に記載されている設計上の推奨事項に従うことで、エンドユーザーに有意義な経験を提供するのに十分な帯域幅容量を確保できるはずです。他の学校や中小企業でワイヤレスネットワークを実装したまたは実装する過程にある同僚とベストプラクティスを共有することも、貴重な資源となる可能性があります。

NETGEARについて

ネットギアはグローバルネットワーク企業として、特に中小企業や教育機関のニーズを満たすように設計された、信頼性が高く、手頃な価格の、扱いやすいソリューションを提供しています。ネットギアのアクセスポイントとワイヤレスコントローラーを使えば、パワフルで費用対効果の高いワイヤレスソリューションを学校に導入し、オンライン教育の効果をシンプルかつ素早く実感することができます。ネットギア教育ソリューションで学校や中小企業が得られること:

  • ・ 展開規模に対する総保有コストの削減(5-20​​ AP)
  • ・ シンプルなWebベースのUIにより管理とアクセスが簡単
  • ・ パートナーのサポートと計画
  • ・ アクセスポイントとワイヤレスマネジメントコントローラーの全製品

カバレッジまたはキャパシティベースの調査、プロジェクト定義、実装、拡張段階にあるかどうかに関わらず、ネットギアは広範で経験豊富なリセラーチャネルを介して、堅牢、安全、柔軟なネットワークを設計するために役立つ指導と助言を提供することができます。詳細については、www.netgear.comをご覧ください。

デブラ・チン氏について

デブラは上級副社長として2006年にPalmer Researchに入社しました。彼女は大手消費財やハイテク企業において、管理職レベルのマーケティングとリサーチ担当として15年以上の経験があります。彼女は米国のコロンビア大学ビジネススクールでMBAを、同じく米国のペンシルバニア大学ウォートン・スクールで経済学の理学士を取得しています。2001年に設立されたPalmer Researchは、IT意思決定者やハイテク企業が市場力学をよりよく理解して業務目的を満たすために必要な情報と知識を提供します。同社はカリフォルニア州ロスアルトスに位置しています。詳細はwww.palmerresearchgroup.comをご覧ください。